しののめ日記

汐見 彩 のブログ

採血で卒倒する人しない人

 

20代の若い友人が言う。


「注射が怖いんです。
  採血なんてもっと怖くて…。」

明朗快活を絵に描いたような
ハツラツとした彼女の意外な一面
というヤツだ。

「かわいいとこあるやん。」

とギャップ萌え。

実際、顔もかわいいところがズルいと

私は僻んでしまう。


注射針を前に渦巻く彼女の恐怖感に、
看護師達は

「こいつぶっ倒れるぞ」

と言わんばかりに目くばせすると言う。

「横になる場所を確保だ!」と。
(しかし倒れたことはないらしい。)

若かりし頃の私は
採血の度にぶっ倒れていた。

 

細い血管を太らせるため、
私の腕にゴムバンドを
キツく巻いている看護師に向って私は言う。

「すいません。
   暫く私に話しかけててもらえますか?」

恐怖心を悟られまいと
へっちゃら顔でナゾのお願いをしていた。
気を紛らわせたかった。

採血し得る血管はなかなか出てこんわ、
みょうちきりんな申し出はあるわ、
看護師の困惑が毎回伝わってきた。

ぎこちないトークの末

採血は無事に終わった…と見せかけて

ぶっ倒れる。

迷惑至極。

 

トーク、意味なし。
気、紛れてない。

そんなことなら
予告しておいた方が看護師のためだ。

時空を超えて、衷心より陳謝いたす。

いつからだろう。
採血される様をガン見
するようになったのは。

献血中も同様だ。
成分献血の回は特に目が離せない。

一旦取り出した真っ赤な血液が
遠心分離機にかけられる。
分離された成分(血漿・血小板)は
朝イチの尿のような黄色をしている。
カテーテルを通して
半透明のバッグにおさまった尿…
かと思いきや、
それは誰かの命の糧となり得る
私の血液の一部なのだ。

これをして
【奇跡の小宇宙・人体】
を感じないではいられない。
献血ルームの雑誌もテレビも
私には無用の長物だ。

 

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さて、若い友人の「恐怖心の元」
は何なのだろう。

針が怖いのだろうか。
尖端恐怖症というやつだろうか。
尖がった上に硬い物体が
自らの柔肌を貫通する様が
想像だに怖いということなのだろうか。

チクッまでの時間?
そもそも痛みが怖いのだろうか。

 

そういう自分はどうだったのだろう。
何故ぶっ倒れていた?

先に述べた「恐怖心の元」予測
それに似た理由だったかもしれない。

自分の身体を今より慈しむがゆえの恐怖
だったように思えてきた。
自らの身体を絶え間なく流れる血液が
取り出される恐怖。
針穴ヒトツさえ
身体に傷がつくことへの恐怖。

痛みに強いか弱いか…
によるところも大きいだろうが
些細な痛みに関しては恐怖心はなかった。

 

 


つづく

はじめての映画 『グーニーズ/The Goonies』(1985年米)

子どもの頃、【東映アニメまつり】意外で

はじめて館で観た映画は

グーニーズ/The Goonies』

(1985年米)と

『サンタクロース/Santa Claus:The Movie』

(1985年英米)だった。

 

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ふたつ?

そう思った方は都会育ちの都会っ子だ。

 

私の住む田舎町近隣では

上映本数の管理上なのか、

人手も足りないしめんどくさくてなのか、   
映画1本の料金で2本立てで、

時には3本立てで映画を観ることが常だった。


それを当たり前に思って育ったため、

1本きりの映画を館で観た時は

それがとても贅沢なことに思えた。

社会人になってからは

毎週何本もの映画を観る‘都会人’になった。

 

お姉ちゃんとお父さんと3人で

『グーニース』を観る!


待ちわびていた記憶に間違いはない。

当日、いざ劇場へ足を運ぶと…

あろうとこか火事で館は焼け落ちていた。

 

お恥ずかしい。

「死傷者はなかったか!?」

などを真っ先に問うところ。 

「えーーー!グーニーズはーーー!?」

幼い私は父に噛みついた。

幸い損傷なく残ったフィルムは、

時間を改め

別の館での上映がかなったのだった。

劇場内はなんと満席。

私たちは立ち見で2本の映画を鑑賞した。

短編ではない。

がっつり長編を2本だ。

子どもとは言え

立っている疲れを忘れるほどに

私は映画に魅了されたのだと思い返す。

 


いかにもアメリカらしいお話だった。

伝説の海賊「片目のウィリー」が残した宝。

オレゴン州の港町に住む少年少女が

探しに出かけるの冒険物語。

主人公マイキーが私と同じ喘息っ子だった

とか、

食べたことないモノいっぱいやなぁ

とか、

子どもだけで危ないことするなぁ!

親は何してんの?

とか、

私の記憶に散りばめられた

忘れ得ぬグーニーズの欠片は今も蘇る。

 

当時は気付かなかったが、

子どもの虐待についても描かれていた。

顔面が歪むほどの虐待を

実の親から受けたスロース。

彼を見て自分に言い聞かせていたのは

一体なぜだったろう?

「スロースを怖いと思ったらだめ。」

「優しい子(身体的には大人)なはず。」

ハラハラドキドキ先行の気持ちに

暗い影を落とす彼の存在。

受け入れがたく感じていたのかもしれない。

グーニーズはたのしくあって欲しい!

と幼い私は我がままに

期待したのかもしれない。


アメリカってそうそうこんな感じ。」

「日本と違ってなんかカッコイイ。」

なんしか色々デカい。故にかどうかスゴイ。

その程度だ、幼い私の知るアメリ感。

 

アメリカすげー!」

決定的に思わせたのは

シンディ・ローパー唄う主題歌

“The Goonies R Good Enough” 

を耳にした瞬間ではなかったかと思う。

シンディの歌唱シーンも劇中に登場し

私は目でも耳でもヤラレた。

「このねーちゃんくるってる。」

畏怖しながら歓喜する自分を感じた。

 

スロースをめぐっては

日本人に馴染みのない方法ながら、

実にハッピーな結末を迎えた。

幼い私は安堵していた。

嬉しいのに涙がでそうで

胸はなんだかドキドキしていた。

 

そしてエンドロールで再びのシンディ。

後の私がみるみるアメリカナイズ

されていく要素として、

確実に初期の爪痕を残した映画だった


あら。

別の映画について書くつもりが

グーニーズ』に取って代わられている。

『サンタクロース』についてはまるで触れてないし。

っていうか、内容を全然覚えてないのだ。

ま、殺人も恋愛のドロドロもイチャイチャもなく

実に平和なお話だったはず。

という希望的かつ予想上の感想を

自信を持って添えて一旦終わることにする。

 

はじめての映画館映画がこの作品で幸せだ。

“Goonies Never Say Die!”

数十年に一度の大雨特別警報 愛媛・高知・岐阜 最大級の厳重警戒を

実家のある地方にしかれた

大雨特別警報が解かれぬままだ。

 

自宅の2階での

孤立生活を余儀なくされた知人。
大雨のなか断水で飲み水の入手も

ままならないと言う…。
早々に避難所に行ったばかりに

道路の遮断で身動きが取れなくなった

母の友人。


今、青空の下で

PCに向っている自分がもどかしい。

 

私は阪神・淡路大震災

東日本大震災の揺れの恐怖を

震源地に比較的近い土地で体感した。


その真っただ中にあっては、

生々しい恐怖や先々への不安が

心身ともに充満していた。


家族に無事を報告するも、

目の前の被害に心はずっと捕らわれていた。

今回、実家周辺の情報を

電話やSNSで目の当たりにし、

自分に何か出来ることは?

と気持ちが落ち着かない。


実家の母と喧嘩していても

何事もなかったように電話で話が出来る…

目の当たりにすると、

いかにくだらない喧嘩なのかも

ありありとわかる。

 

この小さな島国の人々が

天災の度にそれぞれに心を痛めている。


飛躍し過ぎかもしれないが、

そんな風に

人を思う気持ちが備わった人間は

戦争なんてせずにいられる

強く賢い生命体であるはずだ。

 

被害に遭われ亡くなった方の

ご冥福をお祈りする…。
これ以上の被害が出ませんよう…。

 

嫁いだ娘の為のお弁当や箱一杯のウェス、

雑巾などを用意して待っている

お母さまのFB投稿を目にした。
道路が遮断されて届けることも出来ない。

どんなに苦しい思いをされているか…。


食事も喉を通らない心持ちに

なったりもするだろうと思う。
でも、ひどい状態が回復し

助けが出せるようになった時に

支援する側は準備万端でいなければ!
きちんと食べて

体力温存しておかなければ!と思う。


今はまだ、身動きが取れないでいる

支援する側の気持ちも道路も

はやく自由に行き交う時の訪れを祈る。

クレヨンしんちゃん 声優交代に思うこと

クレヨンしんちゃん』 

臼井儀人の同名漫画原作のアニメ化作品。
1992年4月13日の放送開始から26年余


「子どもに観せたくないアニメ」

ときに揶揄され


「野原家は見習うべき家族の姿」

ときに称賛され

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今や主人公しんちゃんは

国民的キャラクターであるとも言える。

そんなしんちゃんの声優が

2018年7月6日の放送分から交代した。

 

足掛け27年しんちゃんの声を務めた

矢島晶子さんに代わり小林由美子さん。

声優デビュー当時から

数多くの男声役を務めてきた声優だ。


日本一クセのある喋りの5歳児。

その声優の交代を告げる

ニュースが耳に入ったのは

確か6月のことだった。

 

矢島晶子さんのコメント↓

27年間、春日部の「嵐を呼ぶ5才児」と一緒に過ごして参りましたが、この度、野原家から離れることに致しました。
理由は、しんのすけの声を保ち続ける事が難しくなった為です。キャラクターの声を作る作業に意識が集中し、役としての自然な表現が出来にくくなってしまった為です。

長い間、皆様に親しんで頂き、本当に感謝しております。

しんのすけ」というキャラクターとは離れますが、声の仕事には関わっていきます。また別の機会に他のキャラクターでの私の演技を受け取って頂けましたら幸いです。

27年間、ありがとうございました。


日本国民の5人に1人は

「しんちゃんのモノマネ」

をしたことがあるに違いない。

いや、

人前では照れるけど

家でコッソリやったことがある…だと

3人に1人といって憚らないだろう。

ちなみに我が家と実姉家族

2家族換算では

「3人に2人はモノマネした」となる。

 

7月6日の放送時、

私の足親指と親指の間から出てきた女児が

新生しんちゃんへの

違和感と不快感を露わにしていた。


「しんちゃん2代目声優が我が家から」

と信じさせるだけの声色を

彼女は持っている。


矢島さん降板のニュースを知り

「あ、まだ学業が…」と思った私は

思いの外マジだったことを知った。

リアルタイムの放送を観ながら

彼女は小林さんの台詞を

オウム返しにしていた。

 

「似ている」or「より似ている」

でジャッジをすると

テレビの中より

テレビの前のしんちゃんの方が

より矢島しんちゃんに近かった。

正直、

テレビの前に矢島さんがいるようだった。 


大人の皆さんは記憶にあるだろう。
ドラえもん声優の交代劇を。

 

当然、違和感もあっただろう。
それ以上に寂謬感を得たりもしただろう。
中には怒りさえ…

という人もいるとかいないとか…。

 

「そのうち耳が慣れるって。」

その場の大人代表として

私はテレビの前の矢島さんに

現実を受け入れるようやんわりと告げた。


人間の記憶なんて頼りにならんもんであって、
やがて「最初からこんな声だった」

と錯覚することもあるだろう。

 

10年ぶりに食べた懐かしのラーメン。


「あーこの味!変わってなーい。」

それ、多分ウソ。

変わっていると思う。
変わってないと思いたいだけ。
自分が知っている味が続いていると思いたい欲の主張。


ただ、そのことを誰も責めたりしない。
幸せになるための思い込みなら信じればいい。
誰にも迷惑などかけていない。

 

無理矢理だが、そんな感じ。


声優さんもプロやから

進化に伴い声色も変わる。

実際、

アニメ放送開始当初のしんちゃんの声も

最近まで聞きなれたあの声ではなかった。
「ごくごく普通の男児

であったと記憶している。


矢島さんが26年余の中で日々

「しんちゃんをしんちゃんたらしめた」

その功績は、その継続性を称えるだけでは

全然足りないのだ。


同時に、

“THEしんちゃん”の声を引き継ぐ

小林さんの重圧を想う。


2017年夏に第二子の男児を出産した彼女。
0歳児を抱えてのオファー承諾だった筈だ。
「嵐を呼ぶ5歳児」より

モヒトツもモフタツも嵐を呼ぶのが乳児

であることを知っている。

応援しないでいられようもない。

 

彼女の勇気に涙で画面が歪んできた…

 

ので次回につづく。

はじめての執事カフェ③ 池袋スワロウテイル

はじめての執事カフェ① 

 

megbea.hatenablog.com

 のつづき

 

執事カフェに行ってみたい!」

ふいに沸き上がった興味(衝動)が
実を結んだことに正直自分でも驚いた。

生活に追われ、なんだかんだ疲れ、
楽しむことに罪悪感を感じたりする。


そうやっていつものように、この興味も
フェイドアウトするものと思っていた。

 

ところが

・連れを探し(衝動から3日目)
・日程を決め(衝動から4日目)
・どの執事カフェかを厳選し予約をする
 (衝動から5日目)

 

月の三分の一が休館日という
なかなか強気の営業方針である。

我ながら何事ものらりくらりの私としては
驚異的な初動の速さと決断力を呈した。


衝動からたった17日で実現に至れたことは
2018年上半期のトップニュースと言えよう。

 


紅茶以外の飲み物にも触れておこう。
珈琲はホット/アイスと用意があるそう。

お子ちゃまには
山葡萄などジュースもあるらしい。

カフェと言えば
「足を踏み入れた瞬間の珈琲のイイ香り」
を求めている人には物足りないかもしれない。


なんせ「英国式」
紅茶もイギリスも愛する私には
なかんずく居心地の良い「家」である。

ティーカップもお嬢様の雰囲気に合わせて
執事が選び説明もしてくれる。
茶葉によってもちろんカップも変わる。

私の物は2客とも暖色系の花柄だった。
寒色系が好き、花柄でない方が好ましい、
ということをまだ執事は知らないと見えた。

 

ティーポットに手を伸ばす私を笑顔で制し
「ワタクシが…」
とカップに注ぐ執事の所作は飽く迄美しい。

ホテルラウンジでも給仕は付くが、
お値段は執事カフェの方が
はるかに庶民的である。


嗚呼!
お嬢様として綴りながら
「庶民的」というワードを使い称える。
ニセお嬢様感を増す様が愉しくて仕方ない。

 


当日、悩んだ末に袖を通したのは
姑から頂いた新品のワンピースだった。
自分では買わないような高価なヤツだ。

都心に出るからには、
ましてや執事カフェに行くからには、
自転車でウロウロしている
普段着のままで良いわけがない。

ナゾの虚栄心が働いた。


「スニーカーじゃさすがにな」
20年前に買ったサンダルを引っ張り出した。

10年以上ぶりに、

いや英国へ発って以来のサンダルで

歩きはじめること5分。

右足のヒモの一部がちぎれた。

 

 なんか縁起悪い。

 

サンダルが進むのを拒んでいるのか?

と思わなくもなかった。

いや、ただ古びれただけのことだ。

幸い、靴底と足裏とに挟み込み難を逃れた。

これを思い出として載せておこうと思う。

 

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フフ…どのヒモが切れているか判るまい



 


ちなみに
連れは普段通りの出で立ちであった。
潔いとも思った。

「実は普段からお嬢だったか、君は。」
畏敬の念すら湧いた。

 

オーバーオールの客もいた。

前述の観光客はもっと

「おたく感丸出し」であった。

ちなみに私は、

「おたくは人生の覇者」であると常々思う。

 

もとい、

私は「お嬢様=キレイ目な服装」だと思った。


それぞれの「演じ方」があるのだな、と

執事カフェの魅力を感じた…

そんな瞬間だったかもしれない。

 

館内は写真撮影禁止であるのが

残念のようでいて新鮮でもあった。

 

あ。

「次回までの宿題でございます。」
とにこやかに手渡されたカード。
これがあった。

 

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「優しくされたい」
「イケメンに会いたい」
そんな女性だけのためのカフェ
ではないことを知った。

男子禁制ではないのだ。

 

ファッションについて、
男性より女性に品定めされることに
一層の緊張を覚える私。

他の人はどう感じるものなのだろう?


執事の中にも
「ご主人様」や「お坊ちゃま」、
男性に就くほうが身が引き締まる…

そんな風に感じる者が
いるのかもしれないな、などと思った。

 

 

外食の機会をあまり多く持たない私は
「店員との相性」を
ちょっと気にしたりする。

SNSで即刻DISられかねないこのご時世、
いたずらに、店員のやり方の良い悪い
ではないのかもしれないと思うのだ。

 


執事カフェの給仕スタイル。

私には不慣れであるし

かけられる言葉は台詞でしかない茶番だ。

 

茶番を「完璧に演じ合う」ことは

私には難しかった。

 

けれども、
飽く迄お客(ご主人様)の

心地好い時間を演じる

彼らのお芝居を愉しむめるのであれば、


私は執事カフェ

沢山の☆を付けたいと思った。 

 

秋葉原メイドカフェに行った話を

配偶者に聞いて湧いた執事カフェへの興味。

正直なところ、
当初は
ほぼほぼ“冷やかし”であった。


「ホストクラブみたいなもん?」
正直、ちょっと小馬鹿にしていた。


足を踏み入れる前までは

まだ冷やかし気分があったことも否めない。

 

 

いざ。

大好きな紅茶葉が豊富に取り揃えてあって
お値段もリーズナブル。

執事をはじめ職員の所作・言葉使いは美しく

慇懃無礼な馴れ馴れしさにはほど遠い。
決して嫌な気分になることはなかった。
そして、プチ贅沢気分を味わえる。


入れ替わるお客の半数ほどが
「おひとり様」であったことを
はじめは意外に思えていた。

一度その雰囲気を知った今となっては
「ひとり優雅に紅茶を愉しみたい」

そんな気持ちになるのに不思議はない。

 

執事カフェは大人のための憩いの場だった。

 

 

 

池袋 執事カフェ スワロウテイル

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完全予約制

SWALLOWTAIL -Top-

 

 

はじめての執事カフェ②茶番を愉しむ 池袋スワロウテイル

megbea.hatenablog.com

のつづき

 

 

SWALLOWTAIL の店名は文字通り

「燕尾服 Swallow Tail」のことだろうか。
(tailed coat とも)


燕尾服は男性の夜の礼装らしい。

地下一階で自然光を遮断し、

さらに眩し過ぎない照明の店内は

夜の雰囲気を演出しているようにも思えた。


ティーコゼーやナフキンなどには

お店のロゴと共に

蝶々の刺繍があしらわれていた。

映画【スワロウテイル】の劇中歌が浮かぶ。

Swallowtail Butterfly~あいのうた~

色褪せない、いい歌だな。

 

次訪れることがあれば

蝶々の刺繍の秘密を

紅茶をいただきながら訊いてみようか。

その時は「お嬢様」ではなく

「奥様」と呼んでもらおうとも思う。

 

時間制(80分・90分)の帰宅であるため

やがて身支度を促す言葉がかけられる。

定石は「そろそろお出掛けのお時間です。」

私達が受けたセリフはひと捻り、

「シアタールームでの

       映画鑑賞のお時間です。」

 

連れは「え?」一瞬、真に受けていた。

空気読めや。


なおも映画について触れられたことには、

「お嬢様の大好きな

   【スタンド・バイ・ミー

 をご用意しております。」

 

10年英国留学していたお嬢様が

「昔から」大好きな映画が

   【スタンド・バイ・ミー

年齢だいたいバレとるな、と思った。

やはり次はかならずや

「奥様」と呼んでもらおうと思う。

 

リバー・フェニックスは美しかったなぁ。

っていうか、

観る映画も自分で決められへんやなんて。

お嬢様生活は私には無理やな。

 

 

七夕が近いということで

短冊に願い事を書き笹に吊るした。

【色白・美肌になりたい】

ここそとばかり私利私欲を星に託す。

 

担当執事Nの願いは

ヒョウ柄に優しい世界になれ」

とのこと。

帰り支度をする頃にになって

実はナニワ男なのだと知った。

その日イチ、わくわくした瞬間だった。

 

こないにパリッと標準語喋ってるけど、

燕尾服脱いだらヒョウ柄・関西弁の

 でんがなまんがな男 なんやー。

ギャップ萌え~。

 

自宅を出る私の「いってきます」に、

普段なら「んーーーー」とか「へーーーい」

とかしか返さない我が家のナニワ男。

今日は

 

「いってらっしゃいませ!」

 

と送り出してくれたのは花丸であった。
心の中で褒めてつかわす。

 

道を歩けばヒョウ柄マダムに当たる…

そんな大阪に帰りたくなってきたりもした。

 

 

さらに つづく

はじめての執事カフェ①池袋スワロウテイル

腰まである長髪を佐藤蛾次郎スタイルで

ひとつに結わえ礼装に身を包んだ男性。

ライティングボードを手に

観光客と思しき女性3人組の相手をしている。

彼の背後にある本日の予約状況は

すべて【満席】であった。

 

東京・池袋駅から徒歩10分

執事カフェ スワロウテイル

地下エントランスに続く階段前の光景である。

 


ひとつに結わえた長髪を

「蛾次郎スタイル」と呼ぶ

そんな流行りもルールもないが

瞬時にそう浮かんだ。

 

Q.何故だろう。

 

前出の観光客3人組のうち

1人だけが日本語を話すと思われ、

蛾次郎スタイルの彼との会話を

残りの2人に通訳していた。

予約5分前に到着した私達は

入り口を塞がれた状態にガッカリだ。

 

なんせ暑いねん…。

 

午前中とは言え

30度を超えんばかりの暑さだった。

黒のロングジャケットに身を包んだ

彼のあご先からは汗が滴っていた。

締め方がちょっと足りなかった

水道の蛇口のように

ポタッ・・・またポタッ・・・

 

きっと私は感じたのだ、

「なんか…つらそう。」

 

 『男はつらいよ』ならぬ

A.『ドアマンはつらいよ』

であったのだ。

(ここ、テスト出るよー。)

 

 

 

蛾次郎スタイルの彼も私達の存在に

気付いているのがわかる。

観光客3人組はこの滞在の予約獲得は

叶うことがなかった様子だった。

 

丁寧に頭を下げた蛾次郎に

ようやく店内(お屋敷内)に続く

階段へと通される我々…。

蛾次郎じゃなくてドアマン。

階段前のドアも

車のドアもないけどドアマンだ。

 


「お帰りなさいませ、お嬢様」

失礼のなきよう今日はお嬢になりきろう!

襟を正したそばから咄嗟に口を突く、

「ありがとうございます。」

 

めっちゃ他人行儀。


「お久しぶりでございます。」

にも思わず返してしまう、

「あ、はじめてです。」

全然ご主人様になりきれてないがな。

 

 尚も笑顔を絶やさず続ける執事。

「英国に発たれてもう10年、

 久々のご帰宅でいらっしゃいますね。」

 

嗚呼、プロフェッショナル。

 

 さて、

執事カフェと聞いて浮かんだ執事像は

・イケメン。

・とにかくイケメン。

・あと多分若いバイトの子。

・で、役者志望。

だった。

 

しかし、のっけから

「お荷物をお預かりします。」

と手を差し出したのは

愛着を持って「爺や」と呼びたい

高齢の男性であった。

 

本日の担当執事N、

(名簿によると

 厳密には彼は使用人=フットマン)

彼はアラサーと思われたが、

20代と思われる執事は

殆ど私の目には入らなかった。

更に言うと

イケメンも殆ど目に入らなかった。

 

夢に見た小林賢太郎ラーメンズ

の様な執事はおらず概して予想は外れた。

しかしながら

不思議と残念な気持ちにはならなかった。

 

お客(お嬢様)に媚びるわけではなく

居心地よく過ごしてもらうための術を

熟知している…

それが執事であるようだった。

 

胡散臭い褒め言葉を浴びせかける

ショップ店員とはじぇんじぇん違うのだ。

 

英国式アフタヌーンティは

三段のハイ・スタンドに盛られた本格派。

アンナマリア 3500円なり。

(ヴィクトリアは4000円)


下段…サンドイッチまたはキッシュ
中断…スコーンとプリザーブ(二種)
上段…デザートAまたはB

 

リザーブとは果実の砂糖煮

(コンポートとジャムの間?)ことだが、

ここではクリームなども含んでいた。
スコーンに付けて食べるためのものだ。

 

「プリザーブって何?」

お連れが私に問う。

「あぁ、スコーンの添え物?

  えーっと塗って食べるヤツよ。」

 

添え物て。

塗るヤツて。

 

「英国から10年ぶりにをした」

お嬢様の回答がコレだった。

リザーブ=添え物。

 

 

紅茶葉の種類は目移りしてしまうほど

多様に用意されている。

その説明書きに目を通す時間は

紅茶愛飲家である私の至福の時だった。

勿論、ポットサーブでティーコゼーも。

 

まずは期間限定の 

ダージリン・ファースト・フラッシュ

いわゆる「初摘み」の茶葉だ。

セカンド・フラッシュ(二番摘み)より

淡い色とすっきりした味。

心地好い渋みで喉の渇きが一掃された。

 

2つ目はヘーパイストスという茶葉。

グレープとマスカットのフレーバーティー

カップに注がれると同時に

座していた半個室に強い香りが充満した。


元来大メシ食らいの私には

一見「すくなっ」なアフタヌーンティも

ゆっくり優雅に口に運ぶウチに

満腹中枢を刺激したのか

物足りなさは感じられなかった。


アフタヌーンティーの他には

軽食も用意されている。
パスタ、シチュー、冷静スープ

それぞれのセット。

いずれもアフタヌーンティーと同額。


サラダとデザート付き。

もちろん

ポットサーブの紅茶も選べるのだから

悪くない。

紅茶が好きな人には

たまのプチ贅沢にピッタリであろう。


ただ、

私は紅茶が好きが高じてペースがはやい…。

執事が来る前に

ポットが空っぽになったことは

失礼であったかもしれない。

 

少々慌てた様子の執事、「すべて私達が…」

笑顔のニセお嬢様、「お気遣いなく」

あやうく言いそうになってしまった。

執事プライドを傷つけるのはルール違反だ。

 

いや、違うぞ。


10年前、身の回りのことを

何から何までやってもらう生活に

疑問を持ちこの御屋敷を出た私。

独りの生活を続ける中で

自炊もした。

洗濯もした。

腐ったものを食べると

決まって3時間後にゲロを吐く、

という体質も判った。

海外旅行をすると

便秘が悪化することも知った。

行きに食べた機内食

帰国してなお出てこないのだ。

「況や紅茶をカップに注ぐことをや」

今の私にはワケないことなのだ、執事よ。

心の中でお嬢様のセリフを言ってみた。


そうしていると、

全部やってもらおうと思わずとも

「気持ちだけでうれしい」

そんな普段の自分の心が見えて

ちょっとハッとしたりもするのだった。

 

支払う気なんざないけれど、

既に会計をしている先輩の横で

財布を鞄から出してみたりする

アレと似ている。

 

いい話にしようと思いきや

ウッカリ墓穴を掘ってしまった。

まぁ、いいだろう。

 


10年前に英国に発ったお嬢様が

帰ってくる家は英国式なのか…。

ちょっと設定が甘くないか?

英国じゃなくて

スペインとかにしてもらえぬ?

バルセロナとかどう?

サグラダファミリアの完成を

見届けてから帰国する!

無知丸出しの無計画渡航

後に引けなくなったお嬢様。

主任彫刻家に日本人がいると知って

ホームシックになって

帰ってきたお嬢様とかじゃダメ?

 


つづく